エッジAI観測所 — 実機ライブダッシュボード
運営者の自宅で稼働するJetson・Hailo・Raspberry Piの温度・消費電力・推論速度をリアルタイム公開。フィジカル(実機)とサイバー(このページ)がつながるCPSの最小構成です。
このダッシュボードはどう動いているか
CPS(サイバーフィジカルシステム)は「現実世界のセンシング → 集約 → 可視化・フィードバック」の閉ループです。 このページはその最小実装で、現実側が自宅のエッジ実機、サイバー側がいまあなたが見ている画面です。
実機がローカルで収集
自宅ラボのJetson / Hailo / Raspberry Piが、自分の温度・電力・CPU/メモリ・推論速度を毎30秒セルフ計測。
outboundでVPSへpush
実機側からHTTPS POSTで送信するだけ。自宅ネットワークへのポート開放・インバウンド通信は一切ありません。
VPSが集約・保存
トークン認証で受け取り、デバイスごとに最新値+24時間分の履歴リングバッファとして保存します。
ブラウザへライブ配信
このページが10秒ごとにフィードを取得。あなたは「現実の機械の状態」をWebで観測しています。これがCPSの最小形です。
観測ノート #1 — ファーストライト(2026-06-12)
実機を観測所に接続した初日の記録。全コア100%のCPU負荷を3分間かけ、熱・電力の応答をこのダッシュボード自身で実測した。
| 実測項目 | Jetson Orin Nano Super | Raspberry Pi 5 |
|---|---|---|
| アイドル時の温度 / 電力 | 48.2℃ / 4.9W | 35.3℃ / —(電力センサーなし) |
| 全コア100%・3分後 | 55.8℃(+7.6℃)/ 10.3W(約2.1倍) | 54.6℃(+19.3℃) |
| 負荷解除後の戻り | 約50秒で52.4℃ | 約20秒で41.4℃ |
📈 数値から読み取れること
- Orin NanoはCPU全力でも約10W。AI推論の主役はGPU/DLA側なので、推論負荷の電力カーブは別物になる(次回観測予定)
- Pi 5は+19.3℃上がるが、解除後わずか20秒で41℃台へ。アクティブクーラーの効きが応答カーブにそのまま現れる
- 30秒粒度のセルフ計測でも熱応答の形は十分捉えられる — 現場モニタリングのサンプリング間隔設計の実測根拠になる
🔧 セットアップで踏んだ実地の罠(現場ノウハウ)
- Jetsonは無効化されたthermal_zoneの読み取りがOSErrorではなくTypeErrorで落ちる — 例外設計は実機で確かめるまで分からない
- Orin NanoのINA3221は電力値の直接ファイルを持たず、電圧(mV)×電流(mA)の自前計算が必要
- 「LANは通るのに外に出られない」はデフォルトゲートウェイ欠落の典型。push型テレメトリは外向き443さえ通れば動くので、切り分けが単純で済む
観測ノート #2 — CPU全力 vs AI推論全力(2026-06-13)
Jetson Orin Nano Super(MAXN_SUPERモード)でResNet50の推論(TensorRT FP16・バッチ1)を約4分間連続実行し、 ノート#1のCPU全力負荷と「同じ全力でも何が違うか」を比較した。スループットはこのダッシュボードのfps欄に実際に流れた値。
| 実測項目 | アイドル | CPU全コア100%(#1) | GPU推論全力(#2) |
|---|---|---|---|
| 消費電力(VDD_IN) | 約4.9W | 10.3W | 18.9W |
| SoC温度 | 約50℃ | 55.8℃ | 68.2℃ |
| CPU使用率 | 約4% | 100% | 12% |
| スループット / レイテンシ | — | — | 508〜514fps / 平均1.95ms |
📈 数値から読み取れること
- AI推論中のCPUはわずか12% — 主役はGPU。「CPUが暇=推論パイプラインが健全」という監視指標になる
- 同じ「全力」でも消費電力はCPU 10.3W vs 推論18.9W。エッジの電源・熱設計は推論負荷で見積もるべき
- 効率は約27fps/W。クラウドGPUと比べる際の土俵は絶対速度ではなく「fps/W」
- 68.2℃で熱だれなし(508〜514fpsで安定)— ファン付きDevKitの実力
🔧 観測設計のメモ
- fps/レイテンシはベンチ側がJSONを書き、エージェントが「5分以内に更新されたものだけ」送る設計。推論を止めるとfps表示は自然に消える
- 負荷終了直後の1サンプルに「電力は平常・fpsは残存」という点が現れる — 鮮度ウィンドウの跡で、異常ではない
- 電力モードはMAXN_SUPER。15W/25Wモードでは別のカーブになる(次回の観測候補)
観測ノート #3 — 電力枠を絞ると「効率」は上がるのか(2026-06-13)
Jetson Orin Nano Superの電力モード(15W / 25W / MAXN_SUPER)を切り替えながら、 同じResNet50推論(TensorRT FP16・バッチ1)のスループット・消費電力・温度を実測。 消費電力はINA3221(VDD_IN)の実測値、fpsはこのダッシュボードのfps欄に流れた値です。
| 電力モード | 実測電力 | スループット | レイテンシ | 温度 | 効率(fps/W) |
|---|---|---|---|---|---|
| 15W | 10.35W | 314.7 fps | 3.17 ms | 54.4℃ | 30.4 |
| 25W | 15.65W | 469.2 fps | 2.13 ms | 57.1℃ | 30.0 |
| MAXN_SUPER | 17.17W | 509.1 fps | 1.96 ms | 58.9℃ | 29.6 |
📈 いちばんの発見: 効率はほぼ一定(約30 fps/W)
- 電力を15W→25W→MAXNと上げてもfps/Wは30.4→30.0→29.6でほぼ横ばい。電力を絞っても「効率」は上がらない——スループットが電力に比例して下がるだけ
- つまり電力モードは「効率の調整つまみ」ではなく「消費電力と発熱の上限つまみ」。同じ仕事なら消費エネルギー(J/枚)はどのモードでもほぼ同じ
- 15W枠でもMAXNの約62%のfpsが出る。電源・放熱が厳しい現場では、15Wでも十分実用的という判断材料になる
🔧 実地メモ・正直な限界
- このSuper構成の実機では「7Wモード」への切替が反映されず(指定してもMAXNのまま)、7Wは測定対象から除外した
- 結論はResNet50・FP16・バッチ1での話。モデル・精度・バッチが変われば効率カーブも変わりうる(要検証)
- 温度は15W→MAXNで+4.5℃に収まり、いずれも熱だれなし。ファン付きDevKitの実力
この「効率はハードのスイートスポットでほぼ決まる」という視点は、 GPUやNPUを選ぶときに絶対速度ではなく fps/W(性能/W) で土俵を揃えるべき、というCUDAなしでAIを動かす・欧州&AMDのチップ大全の主張とも一貫します。
自宅の実機を公開するためのセキュリティ設計
「自宅のデバイスをインターネットに公開する」と聞くと危険に思えますが、 設計しだいで攻撃面をほぼゼロにできます。現場のIoT/CPS導入でそのまま使える考え方です。
📤 push型 — インバウンドゼロ
通信は実機→VPSの一方向のみ。自宅側にポート開放や固定IPは不要で、 外部から自宅ネットワークに到達する経路がそもそも存在しません。
🔑 トークン認証 + レート制限
テレメトリの受信は共有トークンを知る実機のみ。 第三者がダッシュボードへ偽データを流し込むことはできません。
🔢 数値のみ — 映像・個人情報なし
公開されるのは温度・電力などの数値だけ。カメラ映像・音声・自宅のネットワーク情報(IP等)は 保存もしていないため、漏れようがありません。
⏱️ オフライン設計
実機が停止してもダッシュボードは「最終受信時刻」を示して動き続けます。 現場のモニタリングでも「データが来ないこと」自体が重要なシグナルです。
CPS×エッジAIをもっと深く知る
センシング→エッジ推論→フィードバックの閉ループをどう設計するか。 建設・介護・インフラ点検の現場でCPSを動かすための考え方を、入門ガイドにまとめています。 連合学習(FL)と組み合わせれば「現場のデータを外に出さずに、現場群全体が賢くなる」構成も作れます。
技術仕様
| 実機側エージェント | Python標準ライブラリのみの常駐スクリプト(約200行・自作)。/sys・/procからセルフ計測し、 30秒ごとにHTTPS POST。systemdで自動起動・自動復帰 |
| 収集メトリクス | SoC温度・CPU使用率・メモリ使用率・消費電力(対応機のみ)・推論fps/レイテンシ(ベンチ実行時) |
| サーバー集約 | Next.js APIルート + JSONファイル永続化。デバイスごとに最新値+24時間履歴(リングバッファ)。 Bearerトークン認証・ペイロード検証・レート制限つき |
| 配信 | 公開フィードAPIをブラウザが10秒間隔でポーリング(タブ非表示中は停止)。履歴は240点へダウンサンプル |
同じ構成を自分のラボでも
Raspberry PiやJetsonが1台あれば、このダッシュボードと同じpush型テレメトリ構成を自宅・現場で再現できます。
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